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東京医科歯科大学2008年度入試問題生物

理科二科目で120分、120点。


以下の文をよく読んで、設問に答えなさい。解答は解答用紙の指定された欄に記入しなさい。

パンを焼く

あきら君が学校から帰って玄関の戸を開けると、台所の方から、とてもよい香りが漂ってきた。食欲をそそる焼きたてのパンの香りだ。お母さんがもう一回分パンを焼くというので、手伝うことにした。ふだん、台所を手伝うなんてめったにないのだけれど。

「パンの作り方」を見ながら順にやっていけば、簡単に作れるのよ、とお母さんは言う。まず小麦粉(強力粉)とバター、食塩、砂糖(ショ糖)、酵母菌に水を加えてよく混ぜる。混ぜるときは手のひらを使ってよくこねながら混ぜ、ときどき、塊をたたきつける。こうするとしだいにパン生地に粘りが出てくる。パン生地をボールに入れてラップしてそのままおいておく。暑い日なので室温でいいそうだ。これが発酵だ。膨らんだら切り分けて、パンの形に成型し、もう一度発酵させてオーブンで焼く。

パンのふっくらとした焼き上がりと独特の香りは、酵母菌(ここでは出芽酵母の一種であるパン酵母を指し、学名はSaccharomyces cerevisiaeである)のはたらきによって発生する二酸化炭素問えたノールのためである。パン生地に閉じ込められた二酸化炭素は焼くことによって膨らみ、細かい穴がたくさんできる。一方、エタノールとその他の有機物が独特のパンの香りを生み出す。「パンの作り方」を書いたものを見ていたら、パン生地作りが生物で習った呼吸と発酵の仕組みと深く関係しているのだと実感できた。

「パンの作り方」には、ショ糖が酵母菌の「食べ物」になると書いてあった。でも生物で習ったときは、解糖の出発物質はグルコース(ブドウ糖)だった。ショ糖は二糖類でグルコースとフルクトース(果糖)からできている。酵母菌はショ糖を取り込んで分解して、解糖系へ送っているのだろうか。細胞膜の性質で習ったけれど、細胞膜を通過できるのは分子量の小さな水や酸素などで、分子量の大きな溶質は通さないはずだ。もちろん細胞膜は選択的透過性を示すのだけれど。動物の場合、血中を流れているのはグルコースで、細胞はこのグルコースを取り込んでいる。どうやってグルコースを取り込むのだろうか。そもそも、酵母菌はどんなものだろうか。いろいろと疑問が出てきたので、おいしいパンで夕食を終えた後、少し調べてみることにした。

酵母菌

教科書と百科事典、それとインターネット上の情報を見ながら、酵母菌について調べてみた。まとめてみると、次のようになる。

「酵母菌は菌界$ _{1)}$ の子嚢菌門に属している。菌界にはキノコ、カビ、酵母などが含まれ、古くは植物界の一員と見なされていたが、現在では独立した界として扱われる。菌界に属する生物の細胞は、細胞壁を持つが葉緑体がなく、分解酵素を細胞外へ分泌して、有機物を消化・分解し、細胞表面から吸収する従属栄養生物の特徴を持つ。$ _{2)}$ また、菌界の生物は細菌類と混同されるが、細胞の大きさや構造にかなりの差があり、まったく別物である。$ _{3)}$ パン酵母やワイン酵母などのはたらきは、古来より発酵として知られ、人類の食生活に深く関わってきた。

酵母菌は球形あるいは卵形で、大きさは径 $ 5\sim10\mu m$ で、細胞内の基本的な構造は他の真核生物と共通している。核の直径はおよそ$ 1\mu m$ で、細胞小器官として小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアをそなえているが、ヒトの場合のようには発達していないし、数も少ない。また植物のように液胞があり、細胞の中で大きな空間を(直径 $ 1\sim3 \mu m$ 程度)を占めている。細胞膜の周囲には薄い隙間をはさんで、すでに述べたように細胞壁がある。細胞膜にはフェロモン受容体やさまざまなトランスポーターなどの膜タンパク質が存在する。

有性生殖を行う真核生物では、核が単相(一倍体)の世代と複相(二倍体)の世代を交互に繰り返す世代交代を行う。この世代交代の過程を発育段階順につないで環状に示したものを生活環と呼ぶ。

\includegraphics[width=120mm]{1.eps}

酵母菌は単細胞で、多細胞生物が行うような有性生殖をするわけではないが、単相世代と複相世代を交代させることができる(図)。酵母菌は栄養状態(特に窒素源)が悪くなってくると、胞子嚢を形成し、減数分裂をしてその中に4つの胞子を形成する。栄養状態が回復すると胞子は胞子嚢から出て、2つの異なる接合型($ a$$ \alpha$ )をしめす細胞となる。これらの細胞は増殖し、接合型のことなる細胞同士は認識して、接合することができる。

酵母菌は、ふつうは二倍体で存在し、環境がよければ2時間程度で細胞周期が一周して数が倍になる。このとき酵母菌は出芽と呼ぶ分裂様式によって細胞が二つになる。二倍体だけでなく、一倍体の細胞も出芽によって増殖する。母細胞から小さな娘細胞が出芽し、出芽した部分が母細胞と同じ大きさになると二つの細胞に分かれる。このとき、ミトコンドリアも分裂によって数を増やしていて母細胞と娘細胞に振り分けられる。

ある種の試薬はDNAと結合する性質があり、紫外線をあてると蛍光を発するので、DNAの分布を明らかにすることができる。$ _{4)}$ 核外のDNAが増殖するときには、核DNAと同調して複製されることが知られている。」

ショ糖とグルコース

酵母菌の構造はわかった。それではどうやって「食べ物」を取り込んでいるのだろうか。さらに調べてみると、酵母菌の食べ物であるショ糖は、細胞壁を通って細胞膜との間にある隙間に入ると、酵母菌が放出した、ショ糖を加水分解するスクラーゼ(サッカラーゼ、インベルターゼともいう)によって分解され、その結果、グルコースが生成する。グルコースは細胞膜に埋め込まれたグルコーストランスポーターと呼ばれる膜タンパク質によって細胞の中に取り込まれる、と書いてあった。

ヒトの場合も、ショ糖はグルコースに分解されてから小腸で吸収される。分解酵素は小腸の吸収上皮細胞の微絨じゅう毛に結合していて、加水分解は吸収の直前に行われる。吸収上皮細胞にはグルコーストランスポーターがあって、分解されたグルコースはすぐにこのトランスポーターによって細胞内へ取り込まれる。消化管の中は、ある意味では体の外側なのだから、酵母菌でもヒトでも、細胞の外部で単糖類のグルコースに消化してから細胞の中に取り込むのだ、とあきら君は納得した。

よく調べてみると、血中のグルコースを細胞が取り込むのも、こうしたグルコーストランスポーターが細胞膜にあるからだと書いてあった。この前に観たテレビの番組の中で、「水を通すアクアポリンというタンパク質があって、水の再吸収を高めるときには、バソプレッシンのはたらきにより細胞膜のアクアポリンの量が多くなる」と話していた。水だけでなく、血中のグルコース濃度(血糖値)$ _{3)}$ やいろいろなイオンなども細胞膜のタンパク質によって細胞内への出入りが調節されている。タンパク質のとても重要なはたらきの一つなのだ。

こうして取り込まれたグルコースはエネルギーをつくるのに使われ、タンパク質を消化して得られるアミノ酸は自分の体に必要なタンパク質をつくるための材料となる。

発酵と呼吸

酵母菌がショ糖を食べるのは、酵母菌が生きて増殖するために必要なエネルギーを得るためだ。グルコースを原料としてこれを酸化してATPという分子を作り出す。生物の時間に、この過程について詳しく学んだ。

教科書を中心に復習してみると、好気呼吸は大きく3つの段階に分けることができる。まず第一に、グルコースは、細胞質基質で解糖の過程を触媒する酵素によって次々と処理されピルビン酸になる。この過程では、酸素が使われることはないし二酸化炭素も発生しない。グルコースからピルビン酸になる過程で、差し引き2分子のATP$ _{6)}$ が生成し、脱水素酵素のはたらきで4つの水素原子が奪われ(酸化され)、補酵素の一種であるXにわたされる。百科事典には、Xという補酵素はNADという名前の分子であると書かれていた。この過程はあらゆる生物に共通のATP酸性過程である。

酸素のある状態では、次の第二段階でピルビン酸はミトコンドリアに取り込まれ、二酸化炭素が切り離され、水素をNADに渡して活性酢酸になり、クエン酸回路に入る。クエン酸回路を一周する間に、さらに二酸化炭素が切り離され$ _{7)}$ 、水素は水素イオンと電子に分けられ(この水素イオンH$ ^{+}$ をプロトンと言う。以下プロトンと表記する)、電子はNADに渡される。最後の第三段階では、NADは電子をミトコンドリア内膜にある電子伝達系(水素伝達系という場合もある)に渡す。電子は電子伝達系のタンパク質に次々と伝達され、最終的にプロトンおよび酸素と反応して水になる。電子伝達系はこの電子の移動に伴うエネルギーを使い、プロトン濃度の購買をミトコンドリア外膜-内膜間の腔所とマトリックスの間に作り出す。この勾配を利用して内膜上にあるATP合成酵素を活性化してATPを産生する。こうしてグルコースは完全に二酸化炭素と水に分解される。

じつはATPの産生にはこの酵素の回転運動が関係することがわかったととある大学のホームページに書かれていた。水力発電ではダムに貯めた水の落下する勢いで発電機のタービンを回して電気を作るように、濃度の高いプロトンがATP合成酵素を通過するときにタービン(のようなもの)を回して、そのエネルギーでADPとリン酸からATPを合成しているのだという。体を構成する細胞内のミトコンドリアのない膜上で、小さなモーターが回っているなんて、なんかとても愉快に思えた。しかもモーターと同じように逆回転させることもできるらしい。逆に回転させるにはATPのエネルギーを使う。そうすると今度は、この酵素がプロトンを濃度の低い方から高い方へと汲み上げてプロトンの濃度勾配をつくるそうだ。

酵素がない状態では、解糖系だけでATPをつくるが、NADと接合したプロトンを別の分子に渡して元のNADにもどらないと、解糖系を動かし続けることができない。ふつうはピルビン酸を乳酸に変える過程でこの水素を使う。こうしてNADをリサイクルしている。これが乳酸発酵という過程だが、酵母菌ではアセトアルデヒドを経てエタノールを生成する過程を使ってNADをリサイクルする。これは酵母菌がピルビン酸脱炭酸酵素を持っているためであり、この酵素によりピルビン酸がアセトアルデヒドと二酸化炭素になり、さらにアルコールデヒドロゲナーゼ$ _{A)}$ によりアセトアルデヒドが水素を受け取ってエタノールに変換される。

ただし、酵母菌が呼吸と発酵のどちらかに偏るかは、周囲の条件による。酸素がなければもちろん発酵しかできないが、酸素があっても呼吸だけをしているのではなく、発酵も行う。とくにグルコースがたくさん得られるようなときは発酵も行うので、呼吸商は1と異なる値をとる。

イオンの偏りがすべての元

教科書にはあまりはっきりと書いてはいなかったが、呼吸によるATPの合成は、ミトコンドリアの内膜を挟んで両側に生じたプロトン濃度の偏りを利用していたのだ。このプロトン濃度の勾配は、食物から得たグルコースを使って作り出している。

どんな生物でもこうしてつくられたATPが、筋肉の収縮、繊毛運動、細胞分裂など、細胞が行う様々な活動に使われる。

一方、原核生物、たとえば大腸菌はプロトンの偏りを直接、鞭べん毛の回転運動に変えている。$ _{B)}$ 大腸菌はミトコンドリアの外膜をはずして、内膜を細胞膜としたような構造をしていると考えることができる。大腸菌の細胞質基質には解糖系があり、細胞膜には電子伝達系の酵素があるので、グルコースを使ってプロトンを細胞外へ汲み出すことができる。このプロトンはミトコンドリアの場合と同じように、ATPを合成するのに使われるが、直接、鞭毛モーターを回転させるためにも使われる。大腸菌の鞭毛はフラジェリンというタンパク質が重合してらせん構造をしており、この鞭毛が基部から回転することによって推進力が生じる。

大腸菌の鞭毛運動がプロトンの流れによって駆動されているように、小腸吸収上皮細胞のグルコーストランスポーターによるグルコースの取り込みは、ナトリウムイオンの濃度勾配に依存していると、書いてあった。ナトリウムイオンは細胞外の方が濃度が高いので、濃度の低い細胞内へ入ろうとする。このナトリウムイオンの濃度勾配による駆動力を使って、グルコースが一緒に細胞内に取り込まれるらしい。

そういえば、神経の活動も似たようなことだったと発展学習で習ったことを思い出した。細胞の内側はカリウムイオンの濃度が高く、外側はナトリウムイオンの濃度が高い。このようなイオンの偏りによって、静止電位や活動電位が生まれているのだという。生物はイオンの濃度差を利用して、実にさまざまなことをしているのだと、あきら君は感心してうなってしまった。

酵母菌の性(接合型)

酵母菌は接合型($ a$$ \alpha$ )が異なると接合できる。したがって接合型の違いは有性生殖を行う生物の雄と雌に該当すると考えることができる。性の分化の出発点なのかもしれない。いったい接合のときにはどんなことが起こっているのだろうか。

調べてみたら、$ a$ 接合型細胞と$ \alpha$ 接合型細胞はそれぞれ、$ a$ ファクターと$ \alpha$ ファクターという特有のペプチドフェロモンを分泌しており、お互いが近づいて相手のフェロモンを細胞膜上の受容体で感知すると、細胞は増殖を停止してフェロモンが来た方に向かって突起を伸ばす。その結果、接合型の異なる細胞同士が接触することができ、まず細胞膜が融合し、続いて核が融合して二倍体の細胞となる。接合型が同じだと、ファクターは受容体に結合することができず、細胞から突起は伸びず、したがって接合は起こらない。

この接合型はMAT遺伝子によって決定されていることがわかっている。MATにはMATaとMAT$ \alpha$ の対立遺伝子があり、一倍体の胞子になって別々の接合型細胞に分配されると、遺伝子としてはたらきを示すようになる。この遺伝子がコードしているタンパク質は、DNA結合部位を有し、転写され翻訳されると調節タンパク質としてはたらく。MATaタンパク質が制御する遺伝子群の一つはaファクターと$ \alpha$ ファクター受容体をコードする遺伝子であり、その発現を誘導し、もう一つは$ \alpha$ ファクターとaファクターをコードする遺伝子で、その発現を抑制する。ファクターと受容体の遺伝子は隣り合ってセットになっていると考えられ、MATa遺伝子とは別の染色体にある。一方、MAT$ \alpha$ タンパク質は、$ \alpha$ ファクターとaファクター受容体をコードする遺伝子の発現を誘導し、aファクターと$ \alpha$ ファクター受容体をコードする遺伝子の発現を抑制する。

こうしてa接合型細胞と$ \alpha$ 接合型細胞は、それぞれ$ \alpha$ ファクターとaファクターを受容体で受け取ると、細胞内にその信号を伝え、増殖を停止し、細胞突起を伸ばして接合する。このa受容体と$ \alpha$ 受容体は、ヒトのある種のホルモン受容体$ _{9)}$ とよく似た構造をしている。酵母菌という簡単な体制の生物が、ヒトの場合とよく似たやり方で信号を受け取っていることにまたまた驚いてしまった。

接合は、二つの異なる細胞がおたがいに認識して細胞が融合をする過程である。接合がさらに進化した受精でも、このような細胞間の認識機構が関与している。たとえば、ウニの受精のときには、静止の先体にある膜タンパク質が卵の細胞膜上にある受容体と結合して、受精が進行する。このようなタンパク質同士の認識機構が生物では非常に重要である。$ _{10)}$

酵母菌を増やす

酵母菌は昔から有用な生物として、大切に代々受け継がれてきた。酵母菌を実験室で増やすには、寒天培地の上に一つずつになるように均等に分散させ(播種という)、高音質で培養すればいい。すると、寒天培地にちらばった1個1個の酵母菌が分裂し、やがて増殖して目に見えるような集団(コロニー)を作る。

1940年代に、このような実験を行っていたフランスのある科学者は、必ず数パーセントの割合で直径が小さなコロニーが現れることに気がついた。そこで、大きなコロニーから酵母菌をとって再び播種すると、やはり小さなコロニーが数パーセントの割合で混じるが、小さなコロニーから酵母菌をとって播種すると、すべてが小さなコロニーになった。小さなコロニーの酵母菌は、光学顕微鏡で見ても外見は普通の酵母菌なのだが、成長や分裂がゆっくりであること、培地のショ糖が少ない状態で培養すると、ほとんど成長できないことがわかった。ここではこのような性質を持つ系統をRD株と呼んでおこう。

酵母菌は単相と複相の両方で増殖が可能なので、野生型株とRD株の一倍体細胞を接合させてできる二倍体$ F_1$ を寒天培地上で増やした。すると、すべてが大きなコロニーを形成した。RDの形質を劣性とするメンデルの「優性の法則」が成り立つように見えるが、この$ F_1$ のコロニーの酵母菌を再び播種して寒天培地上で増やすと、すべてが大きなコロニーを形成するのではなく、やはり数%の割合で小さなコロニーが現れる$ _{11)}$ と書かれていた。何かとても不思議な気がした。

いろいろと調べてきたが、ふだんの生活になくてはならない酵母菌が、生物学のいろいろな面で利用されているのだとわかった。酵母菌の偉大さに感激して、あきら君は改めて夕食の残りのパンを一口、パクリと食べた。

問題1
上の文章の下線 $ 1)\sim 11)$ に関する問いに答えよ。

$ 1)$
生物を五界に分類する方式で、菌界、植物界以外の残りの界の名を書け。
$ 2)$
生物界においては、このような生物群を何というか。
$ 3)$
真核生物祖比較して細菌類の細胞の形態の特徴はどのようなものか、2つ挙げよ。
$ 4)$
真核生物では、核以外二度のような場所で蛍光が認められると考えられるか。
$ 5)$
インスリンは骨格筋や脂肪組織の細胞にはたらいて血糖値を下げる役割をする。どのような方式で行っていると考えられるか書け。
$ 6)$
差し引き2分子と書かれているが、これはどのようなことを意味するか書け。
$ 7)$
ピルビン酸がクエン酸回路を一周する間に何分子の二酸化炭素が発生するか。
$ 8)$
呼吸商が2のとき、好気呼吸と嫌気呼吸の比を求めよ。計算の根拠も書くこと。
$ 9)$
ホルモンはそれぞれ特定の細胞(器官)にのみ作用するが、それは、特定の細胞にそのホルモンに対する特異的な受容体が存在するからである。一般にホルモンは、細胞膜に受容体が存在するホルモンと、細胞質あるいは核に受容体が存在するホルモンに分けることができる。それぞれのホルモンの化学的性質(特徴)と細胞膜に受容体があるホルモンの代表例を2つあげよ(ただし、本文中に出てきたホルモンは除く)。
$ 10)$
生体内には、病原体などの異物を認識して排除する免疫系というシステムがあり、体内に侵入した細菌やウイルスを抗原として認識すると、抗原抗体反応が生じる。どのようにして、病原体などの異物が排除されるのか、具体的にその過程を説明せよ。
$ 11)$
このような現象が起こる理由を述べよ。

問題2
下線Aに関する次の文章を読み、以下の$ 1)\sim 3)$ の問いに答えよ。

あきら君は、アルコールデヒドロゲナーゼという酵素が、酵母菌にどれくらい含まれているのかを調べたくなった。そこで、生物の先生に相談したところ、先生から、アルコールデヒドロゲナーゼよりも扱いやすい類似のタンパク質Aの測定方法を教えてもらった。それは、およそ以下のようなものであった。

この測定方法は、ある色素がタンパク質を構成するアルギニンやリシンのようなアミノ酸と結合すると、色素の色が変化することを利用したものであり、変化した色の濃さを測定すれば、その溶液に含まれるタンパク質の量(濃度)を求めることができるというものであった。

そこでさっそく、タンパク質Aを使い、濃度を変え、それぞれの濃度につき3回ずつ色素と反応させた後の色の濃さを測定した。その結果を表1に示した。先生からは、アルコールデヒドロゲナーゼとタンパク質Aは似ているので、タンパク質Aの濃度を変え、その連続的な変化を示したグラフから、酵母菌のアルコールデヒドロゲナーゼのおよその濃度を読み取りなさいと教わった。そこで、酵母菌からいろいろな抽出操作の後に得られたアルコールデヒドロゲナーゼ抽出液に、同じように色素を加え、反応後の色の濃さを測定したところ、1.0という値になった。

\includegraphics[width=120mm]{2.eps}

$ 1)$
解答用紙に、タンパク質Aの濃度と色の濃さ(相対値)の関係を示すのに、もっともふさわしいと考えられるグラフを描き、酵母菌抽出液におけるアルコールデヒドロゲナーゼのおよその濃度を算出せよ(ただし、グラフは定規などを使う必要はない)。
$ 2)$
先生からタンパク質Aとは化学(生化学)的な性質の異なる別のタンパク質Bを分けていただき、同じように色素を加え測定したところ、表2のような結果になった。タンパク質Aと比較して、このタンパク質Bの化学(生化学)的な性質として考えられることを答えよ。

\includegraphics[width=120mm]{3.eps}

$ 3)$
酵母菌のアルコールデヒドロゲナーゼ突然変異体を先生から分けてもらった。それぞれの変異体からの抽出液のタンパク質濃度を等しくして、酵素活性を測定したところ、表3のような結果になった。変異体Bは、DNAの塩基配列に生じた小さな変異が原因であるという。どのような突然変異が生じていると考えられるか答えよ。

\includegraphics[width=120mm]{4.eps}

問題3
下線Bにあるように、ある種の細菌(大腸菌と同じように考えてよい)の鞭毛モーターは、主にグルコースを酸化することによって得られるプロトンの濃度勾配によって直接駆動される。鞭毛モーターの働きにより、この細菌は泳ぐことができる。この細菌の鞭毛運動について実験を行ったところ、次のような結果が得られた(特に断りのない場合は野生型での実験)。

$ \textcircled{1}$
培養液中にグルコースが存在する場合、酸素があればよく泳ぐ。
$ \textcircled{2}$
培養液中にグルコースが存在しない場合、酸素があってもなくても泳がない。
$ \textcircled{3}$
培養液中にグルコースと細胞膜のプロトン勾配をなくす薬剤(プロトンが幕を自由に通過できるようにする薬剤)が存在すると、酸素があっても泳がない。
$ \textcircled{4}$
プロトン濃度勾配により活性化されるATP合成酵素を欠く突然変異体は、培養液中にグルコースが存在する場合、酸素があれば泳ぐ。
$ \textcircled{5}$
$ \textcircled{4}$ と同じ突然変異体は、培養液中にグルコースがあっても酸素がないと泳がない。

この細菌(野生型)で、

$ 1)$
酸素が存在し培養液中にグルコースが存在する場合、泳ぎ続けるのはなぜか説明せよ。
$ 2)$
培養液中にグルコースが存在すれば、酸素が存在しない条件下でも泳ぐことができる。これはなぜか説明せよ。

問題4
a接合型細胞の接合に関連する遺伝子の発現と接合直前の模式図を描け。名称や説明などを適宜加えること。

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