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東京医科歯科大学2005年度入試問題生物

理科二科目で120分、120点。


以下の文をよく読んで、設問に答えなさい。解答は解答用紙の指定された欄に記入しなさい。

かさぶたを取ったら歴史が見えた

ちょっと気になったので、手の甲にあったかさぶたを爪で引っかいたらポロリと取れて、また出血してしまった。この前、机の角にぶつけてしまい、小さな傷ができて出血したところである。そのときはすぐに血は止まった。はがしてしまったかさぶたをつくづく見ながらあきら君は思った。別にふだんは気にもとめないが、出血しても血はちゃんと止まるようになっているのだ。そういえば、この前、世界史の時間にヴィクトリア女王が登場したが、世界史の先生は、「ヴィクトリア女王は血友病という病気のキャリアー(保因者)だ」とおっしゃっていた。血友病というのは、血が止まらなくなる病気で遺伝するが、普通は女性の発病は稀だがキャリアーとなる場合があり、その子のうち男の子は、半数が発病するという。世界史の先生は、これは生物学で伴性遺伝として習ったはずだよね、とおっしゃっていた。

先生はさらに、世界史の裏話として「クレオパトラの鼻がもしも・・・」と同じような歴史の「もし」の話なのだが、と前置きして次のようなことを話してくれた。ヴィクトリア女王は血友病のキャリアーで、夫君であったアルバート公はもちろん正常だったの$ _{1)}$ で、確率的にその子供たちのうち男の半数は血友病、女の半数がキャリアーになる。このキャリアーだった女子がヨーロッパの王室へ嫁いだので、血友病の病因遺伝子はヨーロッパの王室に広まった。その結果、世界史の流れに影響を与えるような事柄が起こったのである。もっとも有名なのは、ロシアのロマノフ王朝のたどった道である。ニコライ二世に嫁いだヴィクトリア女王の孫のアレクサンドラはキャリアーだったので、その子のアレクセイ皇太子は血友病を発症し、これを気にした皇帝一家が宗教に走り、宮廷に怪僧ラスプーチンの暗躍を許し、ロシア革命の遠因になったというのだ。

どうして出血は止まるのか

ヴィクトリア女王の8番目の男の子であるレオポルト・アルバニーは、血友病を発症して激しい出血に苦しみ、転んだだけでも出血により死んでしまうことを心配して厳密な監視下に育てられたため、、若者としての普通の生き方ができなかった。それにもかかわらず、レオポルト王子は軽微な打ち傷の結果、31歳で亡くなったのである。歴史も生物学も大好きなあきら君は、レオポルトが厳密な監視下におかれて自由な若者らしい生活を送れなかったことに同情するとともに、ヨーロッパ近代史に影を落とした血友病についてもう少し調べてみたくなった。そこで、さっそく図書館に行って、血はどうして止まるのか、血友病になるとどうして止まらなくなるのか、を調べた。

\includegraphics[width=120mm]{1.eps}

出血が止まるのは、血液にはもともと凝固する性質があるためだということがわかった。資料を探して呼んでみると、血液凝固の過程はとても複雑な反応系だということがわかった。なんだか滝の流れのような反応図が描かれている。このような反応をカスケード反応と呼ぶと書いてあった。「反応を要約すると」の部分には、次のように書かれていた。血管に傷がつくと血小板が凝縮し、血小板は凝固因子と呼ばれるタンパク質を放出し、これらのタンパク質と血液中の他の凝固因子やカルシウムイオンなどが順番に反応して、最終的には血液中のプロトロンビンをトロンビンという活性型酵素に変え、この酵素トロンビンが血液中にあるフィブリノーゲンをフィブリンという繊維タンパク質に変える。この繊維タンパク質が重合して赤血球などと絡み合い、血栓と呼ぶ大きな塊となり、傷ついた血管を塞ぐ。

つまり、いろいろな因子が刺激しあって、最後は休んでいた酵素を活性化して働けるようにし、フィブリンを重合して分子量の大きな繊維構造を作るという順番らしい。

血液凝固には多くの因子が関与しているが、血友病になるのは凝固因子のうち第8因子が正常ではなくなって、血液凝固の過程が正常に進まなくなるためである。機能が正常でなくなるのは、第8因子の遺伝子に突然変異が起こり、機能を持ったタンパク質を作れなくなった結果である。

1980年代になって、第8因子がどのようなタンパク質で、その遺伝子がどのようなものかがしだいにわかってきた。第8因子の遺伝子は、X染色体の長い腕の末端近くにあり、およそ180,000塩基対の大きさをもつヒトの遺伝子の中で最も大きな遺伝子の1つであり、26のエクソンに分断されている。この遺伝子は転写されると、最終的におよそ9,000塩基のmRNAとなる。つまり遺伝子の中には使われていない部分があることになる。この部分をイントロンと呼ぶらしい。エクソンとかイントロンとかいう言葉は教科書には載っていなかった気がする。でもなんだかとても大事そうなので調べてみた。

答えは簡単だった。遺伝子の本体であるDNAは塩基の三つ組み(コドン)が1つのアミノ酸を指定している。真核生物の遺伝子はタンパク質のアミノ酸配列に対応して一つながりになっているわけではなく、アミノ酸に翻訳される部分が飛び飛びにあって、間を意味があるとは思えない塩基配列がつないでいる構造をしている。この意味のない使われない部分をイントロンと呼び、アミノ酸に翻訳される部分をエクソンと呼んでいる。そこで、最初はエクソンもイントロンも一まとめにして遺伝子の始めから終わりまでがすべて転写され、その後でイントロンの部分を切り取ってくエクソン部分だけがつなぎ合わされる。この作業をスプライシングと呼んでいる。ちょうどラジオの音楽放送を録音して、後で余計なコマーシャルやおしゃべりの部分を切り取って音楽だけをつなぎ合わさるような感じらしい。

こうしてできあがったmRNAを手に入れることができれば、特殊な酵素(逆転写酵素)でDNAの塩基配列をもどすことができる。$ _{2)}$ これをcDNAと呼ぶが、cDNAをたくさん増やして塩基の配列を決めることができれば、この塩基配列から本来作られるタンパク質のアミノ酸配列を推測することができる。こうしてタンパク質のアミノ酸配列を解析した結果、第8因子は2351アミノ酸からなるタンパク質であることが明らかになった。ただしはじめの19個はシグナルペプチドで、実質は2332個のアミノ酸から構成されている。第8因子は主に肝臓で作られ、上に述べたように19個のシグナルペプチドが切り離されて放出されるが$ _{3)}$ 、血液中では血管内皮細胞(後述)で作られるフォンヴィレブランド因子というタンパク質と結合して、安定化されて運ばれている。

それでは、第8因子タンパク質が正常でなくなる、というのはどういうことだろうか。タンパク質が正常でないということは、当然、遺伝子であるDNAの塩基配列が正常でないことになる。つまり突然変異である。よく調べてみると、血友病と一口に言っても、病状の重さにはいろいろ土佐があるらしい。第8因子の遺伝子はとても大きいので、いろいろなところに突然変異が起こる可能性があり、どこに突然変異が生じたかによって、血友病の症状が重いか軽いかの差が生じることになる。

重い症状の血友病の場合は、次のような例が知られている。一つは、減数分裂の過程で第8因子遺伝子の一部が切り離され、反対向きにつなぎ合わされてしまった(逆位)貯めにスプライシングの位置が狂ってしまい、翻訳されるタンパク質が違ったものになる場合である。もう一つは、塩基配列の一部が無くなったり(欠損)、余分な塩基配列が入り込んだり(挿入)して、ほんらい転写されるべき読み取り枠の位置がずれてしまい(フレームシフト)、異なるアミノ酸配列に翻訳されてしまう場合である。これらの突然変異では、正常な機能を持たない第8因子しか作れなくなる。

一方、症状が中程度あるいは軽度な血友病は、たった一つの塩基の変異(置換)賀宴区損に生じた結果(ミスセンス突然変異)であることが多い。たとえば、コドン2307のミスセンス突然変異によって、アルギニンがグルタミンかロイシンに置き換わると、分泌が阻害されて血中の第8因子の量が減ってしまい、軽度あるいは中程度の血友病になる。この突然片によってできる第8因子は正常な生物活性をもっているが、細胞質の中に留まって、壊されてしまうらしい。

このほかにも、1680番目のアミノ酸のチロシンがフェニルアラニンに代わってしまうミスセンス突然変異が起こると、フォンヴィレブランド因子との結合がうまくいかなくなり、安定化されないので血液中の第8因子の量が減少し、損結果、軽度あるいは中程度の血友病となってしまう。

血液凝固の反応が始まるのは、血小板が血管の損傷によって露出した内皮か組織に粘着することによる。血小板はこの刺激によって突起を生じ、凝集してテトラポッドのような形となり損傷部に蓋をする。さらに血小板から各種の血液凝固因子が放出され、大きな血栓が作られる。これがかさぶたである。上の反応図からわかるように、反応はしだいに増幅され、さらにフィードバックによって反応が加速度的に進むようになっている。

血管の中にあるときは血小板の粘着や凝集反応が起こらないが、血管に損傷が生じると反応が起こる。これは何故なのだろうか。

血管とは何か

この謎を解くためには、血液を体中に運んでいる血管について調べなければならない。そう思ってあきら君は百科事典を辞典コーナーから持ち出して机の上に広げ、血管について調べた。血管について書かれていたことをまとめると、およそ次のようなことになる。

血管は、体中に張り巡らされた血液を運ぶ環状の構造の総称で、さらに分類すると、動脈、静脈、毛細血管に分けることができる。血液循環の過程で、心臓から出た血液を全身に運ぶのが動脈であり、逆に全身から心臓に戻る血液を運ぶのが静脈である。毛細血管は動脈と静脈をつなぐ細い血管である。ヒトのすべての血管を一列につなげたとすると、その長さは100,000kmを超えるほどの長さになるらしい。$ _{4)}$

血管の構造は、動脈と静脈で異なり、また、血管の太さによって異なるが、基本的には血管内面を覆っている内皮細胞を含む内膜、平滑筋細胞からなる中膜、そしてその外側にある外膜からなっている。

動脈は心臓の送り出す血液を受け取り、体の各部に分配する。ヒトでは、酸素を多く含んだ血液は心臓から太い大動脈にまず送られ、さらに枝分かれをした腹腔動脈、腎動脈などを通って、さらに細い小動脈、細動脈となり体幹の各器官に送られる。血液は心臓から大きな圧量を伴って送り出されるので、これを受ける動脈の管壁は厚くなっている。特に、中膜の平滑筋は厚く、心臓から送り出された血液の塊を受けると拡張して受け止め、心臓が拡張期となると動脈は収縮して、血液の塊をさらに先へ送り出す。こうして心臓の心室と動脈の収縮が律動的に起こって、効果的に血液を先へ送ることができる。

一方、静脈は動脈と基本的には同じ構造をしているが、圧力が低い状態で血液を心臓に戻すので、動脈ほど丈夫にできていない。静脈も三層構造をしているが、中膜も外膜も薄い。圧力が低い状態でも心臓に戻れるように、静脈には弁があり逆流を防ぐようになっている。ヒトのように経っている状態では、脚から心臓に血液が戻るためには重力に逆らって流れなくてはならない。この重力による逆流を防ぐ意味でも弁は重要である。

すべての血管の内側の表面は、一層の内皮細胞で覆われている。内皮細胞はとても薄いので、酸素と二酸化炭素の交換も、内皮細胞を通して起こる。赤血球から遊離した酸素は、内皮細胞を通過して周囲の組織液に入り、組織が呼吸の結果、放出した二酸化炭素は、内皮細胞を通って血液内に入ってくる。また、白血球はない皮細胞の隙間や穴を通って血管の外に出て、リンパ管へ移動したり組織の間を巡って、再び循環系に戻る。このように白血球は体内を巡回して、外来の異物の侵入を知らせたり、除去したりする役割を果たしている。

以前は、内皮細胞は単に血液と血管壁とを隔てているバリアーであり、血液が血管内で凝固しないように血管内面に滑らかさを与えている構造に過ぎないと理解されていた。最近では、内皮細胞は多様な生理活性分子を産生して放出する、血管の重要な構成要素であることがわかってきた。

ふたたび血液凝固

血小板が凝集するための最初の刺激は、血管が壊れて血液がコラーゲンと接触することである。コラーゲンとの接触を仲介するのがフォンヴィレブランド因子である。この茂樹によって血小板の凝集反応がおこる。さらにプロトロンビンから作られたトロンビンが血小板に働いて、血小板を活性化する。トロンビンは血小板の細胞膜にあるトロンビン受容体と結合し、細胞内に刺激を送る。

トロンビンが受容体に結合すると、細胞膜にあるGタンパク質と呼ばれる一軍のタンパク質の1つが活性化され、その結果、細胞膜に埋め込まれた別の酵素タンパク質であるホスホリパーゼCが活性化される。この酵素は、細胞膜の成分であるリン脂質に作用して、分子の一部を切り離し、細胞膜内に一部を失った分子が残る。

切り離された分子は、細胞膜にある小胞体に働きかけて、小胞体内に蓄えられていたカルシウムイオンを細胞室内に放出させる。細胞質内のカルシウムイオンの濃度は常に低く抑えられているので、小胞体からカルシウムイオンが細胞質内へ放出されてカルシウムイオンの濃度が高まると、分泌顆粒内の物質が細胞外へ放出されるようになる。

こうして、血小板はいろいろな分子を放出して血液凝固を促進するが、血管に傷がつかない限り普通は血液凝固はおこらない。血管内皮細胞は、負に強く帯電しているので、同じく負に帯電した血小板とは反発しあって血小板の粘着や凝集がおこらないようになっている。さらに、内皮細胞がさまざまなシグナルを発して、血小板に凝集反応がおこらないようにしている。このシグナルとなる分子は、一酸化窒素やプロスタグランディンである。一酸化窒素は血管平滑筋に働いてこれを弛緩させ、さらに血小板に働いて凝集反応を阻害する。一方のプロスタグランディンは、血小板の受容体に結合してGタンパク質を活性化し、活性化されたGタンパク質が細胞膜に存在するアデニル酸シクラーゼという酵素を活性化して、細胞質にあるATPからcAMPを作り出す。cAMPはこんどはカルシウムイオン濃度を下げるように作用する。こうして分泌顆粒の放出を抑制する。

普通はたとえ血小板が凝集してわずかな血小板の血栓ができても、これを溶かすような機構があって大きな塊にはならないようになっている。図1の反応図で血栓 $ \rightarrow$ 溶解と書かれている部分にあたる。この反応にも多くの因子が関わっているが、最終的には生成したフィブリン分子を切断して細かい断片にする。もちろん傷による出血の場合も、血管の傷が修復される過程で、フィブリンは溶解され、除去される。

血管が壊れなくても、血液の中に異常な物質が大量に流れ込むと、血管が壊れたのと同じような反応がおこり、血管内で血液が凝固する病的な状態が発生する。たとえば、体の広い範囲に高度の熱傷を受けた人は、熱傷によって壊れた組織が血液の中に大量に流れ込み、血管の中で血液が固まり、微小な血栓がたくさんできる。もちろん、血栓を溶かす働きが動き出して血栓は盛んに分解されるが、血栓の生成の方が分解を上回ってしまうと体の各器官での血液循環が阻害されて正常な機能を営めなくなり、ついには死にいたることもある。このような状態は、専門用語では播種性血管内凝固症候群(DIC)と呼ばれている。

上に述べたような熱傷以外にも、細胞が血液内で異常に増殖する敗血症、がんの増殖に伴ってがん細胞の産生する物質やがん細胞が壊れて生じる物質が大量に血液中に流出した場合、ある種の毒ヘビに噛まれた場合、間違った血液型の輸血$ _{5)}$ を大量に受けた場合などによっても血液凝固が血管内で起こってしまう。

血液循環

血液凝固をいろいろと調べてきたが、難しい話が多くてつかれてしまった。百科事典をさらにめくって見ると、動物の図が載っていてホッとした。いろいろな動物の血管系について書いてあり、ザリガニの血管系の図が載せてあった。確かに生物の授業でもヒトのような閉鎖血管系と無脊椎動物の解放血管系について学んだ。あきら君は、家で飼っているアメリカザリガニものことを思い出して、今日はこれで止めて家に帰ることにした。後で解放血管系のことを調べてみよう。今家のアメリカザリガニは子どもを持っている。

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アメリカザリガニの子育てはとてもおもしろい。吹かした子ザリガニは、しばらくの間、母ザリガニの腹脚部にぶら下がって生活する。したがって腹脚部より離してもしばらくすると元の母ザリガニの腹脚部に集まってくる。一方、母ザリガニは子ザリガニに酸素が行き渡るように腹脚部を前後に動かす行動をとる。

あきら君は小学生の頃、糸の先にスルメの足や竹輪の切れ端を結んで、近くのどぶ池や小川でアメリカザリガニを釣ったことを思い出した。アメリカザリガニ$ _{7)}$ というのだから当然、アメリカから来たのだろう。家にあった本で調べてみたら、アメリカザリガニ(Procambarus clarkii : 十脚目アメリカザリガニ科)はウシガエルの餌として昭和2年にアメリカから神奈川県大船に輸入された20頭が増えて逃げ出し、各地の水田地帯に分布を広げた、と書かれていた。日本には固有種として日本ザリガニ(Cambarides japonicus : 十脚目ザリガニ科)がいるが、日本ザリガニは北海道、青森県、岩手県、秋田県にのみ分布し、アメリカザリガニよりは小さく、きれいな渓流や冷たい湧き水のあるところに好んで生息する。アメリカザリガニがあっという間に分布を広げたのは、元々の生息地と似たような水田という環境があり、外的や競争相手が少なかったためである。$ _{8)}$

血球の分化

アメリカザリガニと一緒に買っていたメダカが卵を産んだ、ホテイアオイの根の間に、小さな卵がいくつか固まって産み付けられていた。毎日、虫眼鏡で拡大して観察していたら、最初は全く何の構造もなかった卵に心臓ができて、赤いものが動いているのがかすかに見えた。血液が分化したらしい。あきら君はまた、どうしただろうという疑問が湧いてきた。あきら君は、小さい頃お母さんによく「あなたのどうして病にも困ったものネ」といわれたことを思い出した。

翌日さっそく、放課後に図書館に行って、血球の分化について調べてみた。この前、血液と血管のことを調べたのでとても興味が湧いてきた。詳しく書かれているのは最近、研究が進んでいるマウスの血液についてだった。

血液中を流れている血球は成人では骨髄にある造血幹細胞から作られている。ところが、これは最終的な姿で、途中はいろいろな経路をたどると書いてあった。まず、この造血幹細胞の発生は、マウスでは胎生6日に(臓側)内胚葉体されるシグナルによって、血球と血管内皮細胞の初期発生が開始される。最初は血管の内皮細胞と血球は同じものとして分化してくることになる。胎生12日以降になると、造血幹細胞は肝臓へと移行して増殖した後、誕生前に骨髄(一部は、脾臓)に移る。その後は、骨髄中で一生にわたって増殖し、血球を作り続ける。

このような、発生の過程では、細胞間でさまざまなシグナルの交換がおこなわれる。一般に、細胞はシグナル分子を出して近くの細胞に働きかけるが、そこからの距離によって細胞の受けるシグナルの強さが違うので、働きかけに対する応答の様子も違ってくる。また、応答した細胞の中にはそれに応じて別のシグナルを出す細胞もある。そのようなシグナルは、シグナルを受けた細胞の増殖に影響を与えたり、細胞の性質を変えて別の細胞に分化させたりする。$ _{9)}$ 発生の過程ではこのような細胞間のシグナル交換が繰り返されることによって、複雑な生体組織が作られていく。なるほど、血管の内皮細胞のところで調べてわかったシグナルのやりとりと同じなのだ。

かさぶたから始まって、ずいぶんいろいろなことがわかった。あきら君は満足して、図書館を後にした。

問題1
上の分の下線1)$ \sim$ 9)に関して次の問に答えよ。

$ 1)$
第8因子の以上による血友病の遺伝様式について、アルバート公とヴィクトリア女王の染色体型および生まれる可能性のある子どもの染色体型、性、発病の有無を記入せよ。なお、四角の中には性染色体の記号に、正常遺伝子はH、劣性遺伝子はhとして、右上に小さく付記して染色体型を示すこと。
$ 2)$
塩基配列を解析するときには、mRNAのままではなく逆転写酵素によってcDNAにもどしてから塩基配列の決定をおこなう。その理由を簡単に書け。
$ 3)$
この過程は細胞内のどこで起こると考えられるか、書け。
$ 4)$
ヒトの体循環を構成する血管を横に一つながりで描くとどのようになるか、模式図で示せ。回答欄の左側に左心室、右側に右心房を起き、その間の血管の構造の変化がわかるように描き、引き出し線で名称を記すこと。
$ 5)$
間違った血液型を輸血したとき、輸血を受けた人の血液内では輸血された血液との間にどのような反応が起きるか、O型のヒトにAB型の血液を輸血した場合について、生じる反応を順を追って説明せよ。
$ 6)$
次のうち、解放血管系の動物はどれか、記号で答えよ。

ア)ミミズ
イ)プラナリア
ウ)ウニ
エ)トノサマバッタ
オ)ヒドラ
カ)カイメン

$ 7)$
アメリカザリガニが属する門と網を答えよ。
$ 8)$
このような動物を何というか。
$ 9)$
このような現象を何というか。

問題2
播種性血管内凝固症候群(DIC)の状態にある患者さんの血液を検査すると、原因にかかわらずある物質が異常に増加している。この物質はどのようなものであると考えられるか、答えよ。
問題3
図の中に、ミジンコと人の心臓、消化管、中枢神経系の位置関係の違いがわかるように模式図を描け。
問題4
あきら君は、子ザリガニが何を手がかりにして母ザリガニの腹脚部に集まるかを実験で明らかにしようと考えた。いろいろ調べたところ、フェロモンが関係しているという報告があったが、フェロモンだけでは説明できないようなので、視覚系がどのように関係しているかを調べる実験を考えた。あきら君にかわって、実行可能な実験計画を2つ立てよ。
問題5
発生の過程で、拡散性シグナルが細胞に伝わって細胞の文化に影響を及ぼすしくみには、大きく分けて二つあると考えられる(下図を参照)。

しくみ1
細胞Aから分泌されたシグナル分子aの濃度が高いと細胞Bに分化し、低いと細胞Cに分化する。
しくみ2
細胞Aから分泌されたシグナル分子aに反応して、細胞Bに分化し、細胞Bは別のシグナル分子bを分泌し、細胞Cに分化させる。

\includegraphics[width=120mm]{3.eps}

\includegraphics[width=120mm]{4.eps}

$ 1)$
発生して卵割が進んだが、まだ未分化な割球で満たされた仮想的な円筒形の卵を考え、左端から $ \textcircled{1}, \textcircled{2}, \textcircled{3}$ の3つの領域に分けられるとする、いまs、左端の $ \textcircled{1}$ 群の割球のみが細胞Aに分化したが、他の部分 $ \textcircled{2}, \textcircled{3}$ の領域の細胞は未分化のままだとする。

その後、領域 $ \textcircled{2}$ $ \textcircled{3}$ はそれぞれ細胞BとCに分化するとした場合に、この卵における細胞の分化が、しくみ1としくみ2のどちらによるのかを明らかにするには、どのような実験を組めばよいかを考えよ。また、その実験を行ったときに予想される結果も述べよ。

ただし、実験材料としては、上記の卵以外に寒天を用いることができ、また手術を行うことができるものとする。

$ 2)$
実際に発生している組織には多くの細胞が存在し、さらに盛んに分裂をして細胞の数を増やしながら成長を続けている。異なる位置にある細胞をそれぞれ別の種類の細胞に正確に分化させるしくみとして、しくみ2のやり方がしくみ1のやり方に比べて優れている点は何か。

問題6
血友病と威徳地に行っても、突然変異の種類によって現れる症状の重さが異なっている。このことを参考にして次の問に答えよ。

一つの遺伝子が原因で起こる優性遺伝病において、その原因遺伝子に突然変異が起こっても病気になる場合とならない場合がある。また病気になる場合でも突然変異の種類によって症状の重さが異なる場合がある。これらは遺伝子にどのようなことがおこっているためと考えられるか、それぞれ整理して記述せよ。

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