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物理

理科二科目で120分、180点。

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私たちが物体の運動を解析するとき、まず、理想化した条件下で考える。例えば、物体の体積が 1994problemPhysics001.png(191 byte)(質点)であるとか、空気抵抗や 摩擦がないとかいう条件をつける。しかし、現実の世界では、体積が 1994problemPhysics001.png(191 byte)である物体はなく、空気や水のような 流体の抵抗や摩擦が問題となることも多い。

バケツに水をいれ、棒で回転させてみる。水は渦を巻いているが、そのまま放置しておくと、やがて水は静止する。これは、バケツの壁面と水の間の摩擦のほかに、 速度の違う水の層の間の摩擦(粘性)があるためである。もし、空気が水と同程度の粘性をもっていたら、私たちの日常は今とは全く異なるであろうことが 容易に想像できる。粘性は、流体の特性を表す重要な物理量の一つである。

水道の蛇口をほんの少し明け、糸をひくように水を流してみる。この流れのように乱れが無く流れの方向が揃った規則的な流れを層流という。

図1のように、1994problemPhysics002.png(187 byte)軸の正の向きに 流れている層流の中に、1994problemPhysics003.png(233 byte)平面に 平行で面積1994problemPhysics004.png(212 byte)の十分に薄い流体の層を 1994problemPhysics005.png(172 byte)つ、 1994problemPhysics006.png(237 byte)だけ離して仮想的に考える。 層1994problemPhysics007.png(197 byte)、層 1994problemPhysics008.png(209 byte)は、それぞれ 1994problemPhysics009.png(484 byte)で、 1994problemPhysics002.png(187 byte)軸の正の向きに流れているとする。 流体に粘性があると、この1994problemPhysics005.png(172 byte)つの層は 流速をそろえようと互いに力をおよぼし合う。つまり、層1994problemPhysics007.png(197 byte) は層1994problemPhysics008.png(209 byte)を引っ張って 1994problemPhysics010.png(180 byte)に近づけようとし、逆に層 1994problemPhysics008.png(209 byte)は層 1994problemPhysics007.png(197 byte)1994problemPhysics011.png(204 byte)に近づけようとする。この力の大きさ (1994problemPhysics012.png(199 byte))は面積 (1994problemPhysics004.png(212 byte))と 1994problemPhysics005.png(172 byte)つの層の流れに直角の方向への 流速の勾配1994problemPhysics013.png(522 byte)に比例する。 つまり、

1994problemPhysics014.png(778 byte)      (式 1994problemPhysics015.png(123 byte)

となる。

ここで、層1994problemPhysics008.png(209 byte)を層 1994problemPhysics007.png(197 byte)に近づけていき、その極限( 1994problemPhysics016.png(327 byte))を考える。 流速1994problemPhysics017.png(165 byte)1994problemPhysics018.png(158 byte)のみに依存するものとすると (式1994problemPhysics015.png(123 byte))は、 (式1994problemPhysics005.png(172 byte))のように微分で表す ことができ、これが、層 1994problemPhysics007.png(197 byte)と層 1994problemPhysics008.png(209 byte)で接しているときに、 層の間に働く力(粘性力)である。

1994problemPhysics019.png(564 byte)      (式 1994problemPhysics005.png(172 byte)

ここで、比例定数1994problemPhysics020.png(192 byte)のことを 粘性係数(粘度)という。

1994problemPhysics021.png(652209 byte)

問1   粘性係数の次元(ディメンション)を質量 1994problemPhysics022.png(264 byte)、長さ 1994problemPhysics023.png(222 byte)、時間 1994problemPhysics024.png(229 byte)を用いて表せ。 (たとえば、加速度 1994problemPhysics025.png(185 byte)の次元は 1994problemPhysics026.png(441 byte)と表す。)

水の粘性係数を求めるための簡単な装置(図1994problemPhysics005.png(172 byte)) を作ってみた。図1994problemPhysics005.png(172 byte)に示した実験装置は、少量の 水が1994problemPhysics007.png(197 byte)から流れ出すように水道の蛇口 (1994problemPhysics008.png(209 byte))を調節することで、水面が一定に 保たれるようになっている。この円筒の底近くに毛細管を取り付け、この管から流出する水をビーカー (1994problemPhysics027.png(212 byte))で受けるようになっている。 この実験装置をつかって一定時間に流出する水の量を測定することで、水の粘性係数を求めることができる。

1994problemPhysics028.jpg(446887 byte)

問2   毛細管を図1994problemPhysics005.png(172 byte) に示す実験装置に取り付ける前に、管の半径1994problemPhysics028.png(184 byte) (内径を1994problemPhysics005.png(172 byte) 1994problemPhysics028.png(184 byte)とする)をあらかじめ測定しておこう。そのために よく乾いた毛細管に注射器で適当量の水銀を注入し、その時の水銀の長さ 1994problemPhysics029.png(167 byte)を測定する。次に、管より水銀を出し、 その質量1994problemPhysics030.png(203 byte)を測定する。室温における水銀の 密度を1994problemPhysics031.png(174 byte)として、毛細管の半径 1994problemPhysics028.png(184 byte)1994problemPhysics029.png(167 byte), 1994problemPhysics030.png(203 byte), 1994problemPhysics031.png(174 byte)をもちいて表せ。

毛細管の内径が小さく、流速も小さい(遅い)時には、管の中の水の流れは層流となるので(式 1994problemPhysics005.png(172 byte))が成り立つ。

1994problemPhysics032.png(577733 byte)

太さ一様な毛細管の中を水の粘性に逆らって一定量の水が流れるためには、管の両端に圧力差 1994problemPhysics033.png(271 byte) がなければならない。毛細管の両端の断面1994problemPhysics034.png(360 byte) にかかる圧力をそれぞれ1994problemPhysics035.png(304 byte) とすると、 1994problemPhysics036.png(455 byte)である。毛細管の長さを 1994problemPhysics037.png(188 byte),半径を 1994problemPhysics028.png(184 byte)とし、図 1994problemPhysics038.png(190 byte)の斜線で示したような、 管と同軸で半径1994problemPhysics039.png(149 byte)の 円柱形の流体(水)を仮想的に考える。

問3   

1994problemPhysics040.png(201 byte)    水の流速が小さい(遅い)ときには、水の運動エネルギーが無視できるので、圧力差は位置エネルギーのみに依存する。実験時の水温における水の密度を 1994problemPhysics043.png(189 byte),重力加速度を 1994problemPhysics044.png(188 byte)として、 1994problemPhysics033.png(271 byte)を求めよ。

1994problemPhysics041.png(236 byte)    半径1994problemPhysics039.png(149 byte)の円柱に、圧力差によって 流れの向きに働く力(1994problemPhysics045.png(215 byte)) を求めよ。

1994problemPhysics042.png(251 byte)   流速 は、中心軸からの距離1994problemPhysics039.png(149 byte)に 依存している。位置1994problemPhysics039.png(149 byte)における 流速を1994problemPhysics017.png(165 byte)とし、 半径1994problemPhysics039.png(149 byte)の円柱の表面に 流れと反対の向きに働く粘性力(1994problemPhysics046.png(238 byte)) を(式1994problemPhysics005.png(172 byte)) の形に表せ。ただし、粘性係数を1994problemPhysics020.png(192 byte)とする。

水の流れが一定であるということは、円柱にかかる圧力差による流れの向きの力と、粘性力による流れとは反対の向きの力がつり合っているということである。

問4   

1994problemPhysics040.png(201 byte)    円柱にかかる力のつり合いの式を求めよ。

1994problemPhysics041.png(236 byte)    管壁(1994problemPhysics047.png(241 byte))では、 流速が1994problemPhysics048.png(191 byte)であると考えてよい。 問41994problemPhysics040.png(201 byte)のつり合いの式より 毛細管の動径方向(1994problemPhysics039.png(149 byte)の方向) の速度を1994problemPhysics039.png(149 byte)の関数 1994problemPhysics049.png(285 byte)として求めよ。 またこれを図示せよ。

1994problemPhysics042.png(251 byte)    もし、1994problemPhysics017.png(165 byte)が一定ならば、 時間1994problemPhysics050.png(170 byte)に毛細管から流出する 水の体積は(断面積)1994problemPhysics051.png(130 byte)1994problemPhysics052.png(210 byte))である。しかし、 問41994problemPhysics041.png(236 byte) で求めたように、1994problemPhysics017.png(165 byte)1994problemPhysics039.png(149 byte)の関数である。 このことを考慮して、毛細管を通って時間1994problemPhysics050.png(170 byte) に流出する水の体積1994problemPhysics053.png(200 byte) を求めよ。

1994problemPhysics054.png(241 byte)    水の粘性係数1994problemPhysics020.png(192 byte)1994problemPhysics055.png(704 byte)をもちいて表せ。

1994problemPhysics056.png(99205 byte)

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