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小論文I(「物理、化学に関して」の物理該当部分)

小論文Iで120分、150点。

----------♦ I ♦----------

1   「ニュートン環」についての文を読み、図 1990problemPhysics116.png(222 byte)の部分拡大図と補足説明を参考にして下の問 に答えなさい。

問1   

(1)   1990problemPhysics013.png(264 byte)1990problemPhysics014.png(212 byte)線の光の振動数はいくらか。 真空中の光の速さを 1990problemPhysics001.png(666 byte)とする。

(2)   この光を粒子とみたとき、そのエネルギーはいくらか。プランクの定数 1990problemPhysics002.png(611 byte)とする。

問2.   ニュートン環の実験は光のどんな性質を利用したものか。以下の五つの中から一つを選んで、その番号を解答用紙の該当する欄に記入しなさい。

1.反射      2.屈折      3.回折      4.干渉      5.変更

問3.   1990problemPhysics117.png(178 byte) ページで用いられている近似的な関係式

1990problemPhysics003.png(712 byte)

が成り立つ理由を解答用紙の図(右図)を用いて説明しなさい。1990problemPhysics004.png(92014 byte)

このとき、どのような近似式が用いられているのか。また、その近似式を用いることが妥当であることを表 1990problemPhysics118.png(143 byte)の例について説明しなさい。

問4.   波長1990problemPhysics005.png(657 byte) の光を用い、1990problemPhysics006.png(581 byte)のとき中央の暗い部分 から1990problemPhysics007.png(165 byte)番目( 1990problemPhysics008.png(273 byte))の暗環の直径はいくらになるか。

問5.   仮に上のガラス板を1990problemPhysics009.png(338 byte) から少しずつ上に上げることができるとすると、

(1)   中心が一度明るくなって次にまた最も暗くなった時の 1990problemPhysics010.png(255 byte)の値は 1990problemPhysics011.png(181 byte)の何倍か。

(2)   1990problemPhysics009.png(338 byte) から最初に中心が最も明るくなったときの1990problemPhysics010.png(255 byte) の値はどうか。

問6.   以下の文章の中で下線を引いた部分の意味を説明しなさい。電場と光の強度はどのように関係しているのか。

問7.   ガラスの屈折率を1990problemPhysics012.png(216 byte) として反射光と透過光でニュートン環をみたときの干渉じまの可視度をそれぞれ計算しなさい。

*

1-2   ニュートン環

A.   観察

シャボン玉や水面に浮かんだ油などの薄膜を白色光で前方から照らして眺めると、多くの場合色づいたしま模様が見える。これらの薄膜の色は、その上面による反射光と 下面による反射光の二つ野波が重なり合うことによって生じるものである。このように、二つまたはもっと多数の光波が重なり合って、強め合ったり、弱め合ったりする 現象を光波の干渉という。

1990problemPhysics015.jpg(779301 byte)

大きな曲率半径の球面をもつ平凸レンズの凸面にガラス板の平面を接触させて単色光の反射で見ると、ニュートン環の同心円群が観察される。ニュートン環 は、レンズとガラス板の間にはさまれた空気の薄層による光波の干渉じまである。薄層の厚さが簡単に評価できるという点にニュートン環の特徴がある。

ニュートン環の実験では、図 1990problemPhysics116.png(222 byte)に示すように、読み取り顕微鏡の試料台上の黒紙の上に置いた平凸レンズにガラス板を重ねておく。その上に、水平面に対して 1990problemPhysics016.png(251 byte)傾けてガラスの反射板を とりつける。ナトリウム・ランプの放つ黄色の単色光(1990problemPhysics013.png(264 byte)1990problemPhysics014.png(212 byte)線)を集光レンズでほぼ水平な 光束にし、この光束の反射板による反射光で平凸レンズと板ガラスの間の空気の薄層を照らす。顕微鏡で見ると、明暗の同心円の干渉じまがレンズの中央の部分に現れているの が見える。

1990problemPhysics017.png(583898 byte)

B.   光波の干渉

空気層の上面の1990problemPhysics018.png(197 byte) 点で反射した光波と、その下面の点1990problemPhysics019.png(209 byte) で反射し点1990problemPhysics018.png(197 byte)を通る光波とは、点 1990problemPhysics018.png(197 byte)の顕微鏡の対物レンズによる像点 1990problemPhysics020.png(217 byte)で干渉する。これらの二つの 光波について、点1990problemPhysics018.png(197 byte)から像点 1990problemPhysics020.png(217 byte)までの光学距離(媒質の屈折率 に光の光路の長さをかけて加え合わせた長さ)は同じである。したがって二つの光路の光学距離の差(光路差)は

1990problemPhysics021.png(1358 byte)

ここに、1990problemPhysics022.png(428 byte)は、表面のほこりなどに よってレンズの凸面とガラス板の間に生じるすき間の厚さ、 1990problemPhysics023.png(358 byte)はニュートン環の半径、 1990problemPhysics024.png(211 byte)はレンズ凸面の曲率半径 (数十1990problemPhysics025.png(237 byte)ないし数十 1990problemPhysics026.png(203 byte)の程度)である。空気の屈折率は 1990problemPhysics027.png(123 byte)とした。

ガラス板の下面1990problemPhysics018.png(197 byte)点での 内面反射では光波の位相のとびがなく、レンズ面 1990problemPhysics019.png(209 byte)での外面反射では光波の位相が 1990problemPhysics028.png(170 byte)だけとぶ、すなわち波面の位置が が波長の半分の距離だけ変位する。このようにして、二つの反射波が干渉してニュートン環の暗環を生じるための条件は

1990problemPhysics029.png(923 byte)

すなわち

1990problemPhysics030.png(422 byte)

ここに1990problemPhysics031.png(433 byte)

それで

1990problemPhysics032.png(851 byte)

すなわち、ニュートン環の暗環の半径は、次数1990problemPhysics026.png(203 byte) の平方根1990problemPhysics033.png(288 byte)にほぼ比例して増大し、 暗環の間隔は1990problemPhysics033.png(288 byte)に逆比例して減少する。

レンズとガラス板の間には全然すき間がない。すなわち1990problemPhysics009.png(338 byte) とすれば、1990problemPhysics026.png(203 byte)番目の暗環の半径 1990problemPhysics034.png(208 byte)

1990problemPhysics035.png(709 byte)

数値例として、上の式で 1990problemPhysics036.png(608 byte)1990problemPhysics013.png(264 byte)1990problemPhysics014.png(212 byte)線)の光で照らしてみたときの ニュートン環の1990problemPhysics026.png(203 byte)番目の暗環の直径 1990problemPhysics037.png(366 byte)1990problemPhysics038.png(924 byte)1990problemPhysics039.png(172 byte)例について計算してみる(表1-1)。

1990problemPhysics040.jpg(969663 byte)

1990problemPhysics041.png(354 byte)であれば、 1990problemPhysics042.png(235 byte)は表1-1の値よりも小さくなる。数値例 を表1-2に示す。

もし、間隔1990problemPhysics043.png(255 byte)が光の波長 1990problemPhysics044.png(181 byte)の半分よりも大きく、ある正の整数 1990problemPhysics026.png(203 byte)について

1990problemPhysics045.png(908 byte)

であれば、ニュートン環の一番内側の暗環の次数は1990problemPhysics026.png(203 byte) である。

1990problemPhysics009.png(338 byte)の場合には、暗環の半径 1990problemPhysics046.png(149 byte)を与える式 1990problemPhysics047.png(308 byte)で、 1990problemPhysics048.png(290 byte)とおけば 1990problemPhysics049.png(249 byte)となる。すなわち、ニュートン環の 中心は暗く見える。そして、中心付近もかなり暗く見える。

一般に

1990problemPhysics050.png(1969 byte)

の場合には、ニュートン環の中心付近が暗く見える。

1990problemPhysics051.png(1904 byte)

の場合には、ニュートン環の中心付近が明るく見える。

ニュートン環では、ガラス板の下面で入射光が反射光と透過光に分割されることによって、干渉する二つの光波を生じる。シャボン玉、水面の油などの薄膜 の干渉じまについてもこれは同じである。このような干渉を振幅分割による干渉という。これらの干渉じまは、薄膜の厚さの等しい場所にそって走るので、 等厚干渉じまとよばれる。

C.   ニュートン環のコントラスト

1990problemPhysics119.png(213 byte) のように、ガラス板の上方から光で寺下二つの反射光波の干渉によって生じるニュートン環のコントラストは、きわめて高く、見やすい。しかし、レンズの下方 から光で照らし、レンズとガラス板の間の薄層の上下の境界面で 1990problemPhysics052.png(123 byte)回ずつ反射して透過してきた光波と、 反射なしで薄層を素通りして透過してきた光波との干渉によって生じるニュートン環はコントラストが低く、あまりはっきりとは見えない。前の場合には、干渉する 1990problemPhysics053.png(172 byte)光波の振幅 1990problemPhysics054.png(337 byte)がほとんど等しいのに、後の場合には、 1990problemPhysics054.png(337 byte)の大きさがまったく違う。これが上に 述べたような差違の生じる原因である。以下、ニュートン環のコントラストについて論じよう。

同じ方向(プラス1990problemPhysics055.png(170 byte)方向) に進み、同じ偏り、同じ振動数をもつ二つの単色電磁波の平面波の干渉を考える。重ねあわせられた波の電場は複素数の表現を用いると*

1990problemPhysics056.png(1335 byte)

ここに、1990problemPhysics057.png(428 byte)とし、 1990problemPhysics058.png(191 byte)は二つの波の位相差である。上の式の 実数部分が物理的な電場1990problemPhysics059.png(409 byte)

1990problemPhysics060.png(2214 byte)

したがって、強度1990problemPhysics113.png(571 byte)

1990problemPhysics061.png(1171 byte)

となる。

1990problemPhysics062.png(308 byte)の複素数の電場の絶対値 の1990problemPhysics039.png(172 byte)乗は

1990problemPhysics063.png(781 byte)

したがって、複素数の電場1990problemPhysics064.png(207 byte)を 用いて、強度を

1990problemPhysics065.png(528 byte)

1990problemPhysics066.png(597474 byte)

と書いてもよい。多くの場合、こちらの方が計算が簡単になる。強度 1990problemPhysics067.png(180 byte)は位相差 1990problemPhysics068.png(191 byte)の増大にともない、周期 1990problemPhysics069.png(224 byte)で振動的な変化をする(図 1990problemPhysics120.png(211 byte))。

1990problemPhysics070.png(274 byte)のとき、 1990problemPhysics067.png(180 byte)は最大値

1990problemPhysics071.png(790 byte)

1990problemPhysics072.png(263 byte)のとき、 1990problemPhysics067.png(180 byte)は最小値

1990problemPhysics073.png(765 byte)

となる。

干渉じまのコントラストを表すのに、可視度(みやすさ) 1990problemPhysics074.png(200 byte)という量

1990problemPhysics075.png(873 byte)

が用いられる。1990problemPhysics074.png(200 byte)は、 1990problemPhysics076.png(430 byte)の範囲にある正数である。

強度1990problemPhysics067.png(180 byte)が、式 1990problemPhysics077.png(321 byte)で表される干渉じまでは

1990problemPhysics078.png(1399 byte)

1990problemPhysics079.png(334 byte)ならば、 1990problemPhysics080.png(247 byte)で最高のコントラスト、 1990problemPhysics081.png(214 byte)または 1990problemPhysics082.png(232 byte)のどちらかが 1990problemPhysics083.png(191 byte)ならば、 1990problemPhysics084.png(286 byte)でコントラストなしである。 1990problemPhysics085.png(387 byte)または 1990problemPhysics086.png(388 byte)ならば、 1990problemPhysics087.png(410 byte)である。

可視度1990problemPhysics074.png(200 byte)

1990problemPhysics088.png(421 byte)

とも書ける。ここに

1990problemPhysics089.png(667 byte)

は、1990problemPhysics067.png(180 byte)1990problemPhysics068.png(191 byte)の関数と考えたときの 1990problemPhysics067.png(180 byte)の変動の振幅であり、

1990problemPhysics090.png(671 byte)

は、1990problemPhysics067.png(180 byte)の平均値である(図 1990problemPhysics120.png(211 byte))。

ニュートン環を反射光、透過光で見た場合の可視度 1990problemPhysics074.png(200 byte)を評価してみよう。ガラス表面における 光波の反射率、透過率は、ガラスの屈折率の関数である。ガラスの屈折率はガラスの種類によって、また光波の振動数によって異なるが、以下ではガラスの屈折率を 1990problemPhysics091.png(339 byte)として計算する。

この計算をするためには、媒質 1990problemPhysics092.png(178 byte)(屈折率 1990problemPhysics093.png(214 byte))と媒質 1990problemPhysics094.png(184 byte)(屈折率 1990problemPhysics095.png(216 byte))の境界面に、媒質 1990problemPhysics092.png(178 byte)側から光波が垂直入射したときの 透過波の電場と入射波の電場の比(振幅透過率) 1990problemPhysics096.png(236 byte)と、反射波の電場と入射波の電場の比 (振幅反射率)1990problemPhysics097.png(223 byte)の式が必要である。 電磁波としての光波の理論によると

1990problemPhysics108.png(655966 byte)

1990problemPhysics098.png(891 byte)

媒質1990problemPhysics094.png(184 byte)の側から光波が垂直入射する場合には、 上の1990problemPhysics053.png(172 byte)式 で1990problemPhysics114.png(263 byte)を交換して、

1990problemPhysics115.png(827 byte)

以下では、空気を1990problemPhysics092.png(178 byte)、ガラスを 1990problemPhysics094.png(184 byte)で表し、 1990problemPhysics099.png(374 byte)とする。

反射光でニュートン環を見たとき、干渉する1990problemPhysics053.png(172 byte) 光波の振幅1990problemPhysics054.png(337 byte)[図 1990problemPhysics100.png(353 byte)]は

1990problemPhysics101.png(1437 byte)

ここに、1990problemPhysics102.png(239 byte)はガラス板の下面に入射 する光波の振幅である。したがって

1990problemPhysics103.png(869 byte)

1990problemPhysics104.png(353 byte)に代入して、可視度 1990problemPhysics105.png(423 byte)を得る。

透過光でニュートン環を見たとき[図1990problemPhysics106.png(367 byte)] には

1990problemPhysics107.png(1544 byte)

したがって

1990problemPhysics109.png(1010 byte)

1990problemPhysics110.png(353 byte)に代入して、可視度 1990problemPhysics111.png(642 byte)となる。

(飼沼芳郎著「干渉および干渉性」より)

1990problemPhysics112.jpg(953513 byte)

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