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東京医科歯科大学2006年度入試問題数学解説

90分、120点。


$ \fbox{1}$ レベル:$ \gamma$ 、解答時間:30分

整数$ a,\ b$ に対して、$ a\leqq b$ ならば$ a<b+1$ という、ある意味当たり前の事実が、ここでは大活躍します。1987年度にもこの考え方を知っていれば一瞬で解決可能な問題が出題されています(東京医科歯科大学1987年度数学問題2)。簡単な割りには応用範囲は広いので、押さえておくとよいでしょう。

$ (1)$
$ (1)$ までならまだ、なんとか数え上げでも解決できます。その場合は、$ a_1$$ a_5$ を固定して考えるとやりやすいでしょう。

$ (2)$
これも数え上げでどうにでもなるのですが、うまく$ (1)$ と関連させると次につながります。解答のような置き方は、巧妙ですが決して思いつかないレベルではありません。日頃の演習から愚直に数え上げる方法だけではなく、よりよい考え方を求める姿勢が重要なのだと思いますよ。

一般的な話をすると、場合の数の問題は受験する大学のレベルがあがるにつれて、単に数え上げるだけではうまくいかなくなってきます。日頃から、うまい考え方を貪欲に吸収していくことで、試験場で大きなアドバンテージを得ることができます。

$ (3)$
$ r=1,\ 2,\ \cdots,\ 9$ として数え上げても良いのですが、時間がかかります。$ (1),\ (2)$ とうまく波に乗って考えることができた方にとっては、易しい問題だったと思うのですが、高レベルです。

なお、余談ですが、高校数学では、$ _nH_r$ という記号が用いられることもありますが、これは日本だけの慣習のようです。解答のように、組み合わせの記号$ _nC_r$ を用いて考えることができれば十分でしょう。

さらにいうと、実は$ _nC_r$ という記号も一般的なものではありません。海外の数学の教科書を見ても、こんな記号はどこにも記載されていません。$ _nC_r$ と同じ意味を表記しようとするときは、

$\displaystyle \left(\begin{array}{c}n \\ r\end{array}\right)
$

と書くのが一般的です。この記号は、大事な数字$ n,\ r$ が大きく表記されているという点で$ _nC_r$ よりは優れていると思うのですが、ベクトルと間違えてしまう可能性もありますので、ご注意ください。入試の解答中にこの記号を用いても、全く問題ありません。


$ \fbox{2}$ レベル:$ \beta$ 、解答時間:30分

空間図形の問題です。ここ数年は必ずといっていいほど空間の図形が出題されています。

$ (1)$
条件を用いて素直に考えていきます。ベクトルの起点は臨機応変に設定しましょう。何が何でも$ O$ を起点にすればいいというものでもありません。

$ (2)$
問題の文章に引きずられて、 $ \overrightarrow{CH}=\alpha\overrightarrow{CA}+\beta\overrightarrow{CB}$ と置いてしまうと、文字数が3つ( $ \alpha,\ \beta$ $ \overrightarrow{CA}\cdot\overrightarrow{CB}$ )なのに式が2つですから、うまく求まりません。条件から点$ H$ は辺$ AD$$ 2:1$ に内分しますので、そのことを式中に反映しておきましょう。

後は、辺の長さの条件と$ (1)$ を使って、計算です。$ k$ についての二次方程式が出てきますが、$ 0<k<1$ という条件から候補は一つに絞れます。

$ (3)$
余弦定理を用います。

$ (4)$
$ \overrightarrow{OA},\ \overrightarrow{OB},\ \overrightarrow{OC}$ はすべて互いに直交しますから、空間座標に立体を乗せるような感じで、辺の長さを設定するとうまくいきます。三角形$ ABC$ の面積を求めて、$ OH$ の長さを求めて$ \cdots$ とやっていくと、時間がなくなります。できないこともないのですが。

細かいテクニックですが、$ a,\ b,\ c$ を計算するところでは、最初に $ a^2+b^2+c^2$ を計算してしまうと、計算が楽になります。


$ \fbox{3}$ レベル:$ \gamma$ 、解答時間:30分

$ (1)$
この問題が解けないと、理系で受かる大学はありません。

$ (2)$
これも非常に簡単な問題。

$ (3)$
まずは曲線の長さの公式から復習しましょう。平面上の点$ (x,\ y)$ に対して、点が微小な距離だけ動いた $ (x+\delta{x},\ y+\delta{y})$ を考えます。図を見てください。このとき、点が動いた距離は、三平方の定理より

\includegraphics[width=100mm]{3.eps}

$\displaystyle \sqrt{{\{(x+\delta{x})-x\}}^2+{\{(y+\delta{y})-y\}}^2}=\sqrt{{(\delta{x})}^2+{(\delta{y})}^2}
$

となります。したがって、曲線の動いた距離は、これを寄せ集めた(積分した)

$\displaystyle \int{\sqrt{{(\delta{x})}^2+{(\delta{y})}^2}}=\int{\sqrt{1+{\left(\dfrac{dy}{dx}\right)}^2}dx}
$

となります。これは、考え方も含めて覚えておかれた方がいいでしょう。曲線の長さの導出が、出題範囲に含まれるかどうかは、大学によって異なりますが、少なくとも医科歯科大学では当たり前のように出題されています。

なお、パラメータ表示された曲線 $ (x(t),\ y(t))\ (a\leqq t\leqq b)$ が動く曲線の長さは、

$\displaystyle \int_{a}^{b}{\sqrt{{\{x^{\prime}(t)\}}^2+{\{y^{\prime}(t)\}}^2}dt}
$

となります。これも併せて覚えておかれると良いでしょう。

さて、本題に戻りましょう。この問題では、指示に従って立式すると、

$\displaystyle f^{\prime}(t)=\int_{0}^{t}{\sqrt{1+{\{f^{\prime}(t)\}}^2}dt}
$

となります。ただし、$ t>0$ であることに注意しないといけません。そこで、条件をもう一度見直してみると、条件$ (c)$ よりこの関係式がすべての実数$ t$ に拡張できることがわかります。ここは難しく、細かい議論に気が付かなかった方も多かったことでしょうし、気が付いた方でも、議論に時間を取られてしまうことでしょう。この部分で減点された方も多いと思います。

さて、このような方程式を解くことを、微分方程式を解く、といいます。

本質的にこの問題は、微分方程式を解くことに他ならないのですが、高校の範囲では微分方程式の解き方は習っていませんので、うまく$ (1),\ (2)$ の誘導を使う必要があります。

解答では $ F(x)=\log{(f^{\prime}(x)+\sqrt{1+{\{f^{\prime}(x)\}}^2})}$ というやや人工的な関数を考え、これを微分することで、解決を図っています。与えられた条件をもう一度微分すると、

$\displaystyle f^{\prime\prime}(t)=\sqrt{1+{\{f^{\prime}(t)\}}^2}
$

となって、 $ F^{\prime}(t)$$ 1$ になることがわかります。ここら辺は、結果を知っているか、よほど試験当日勘の冴え渡った方でないと、難しい。初見で解けた方は、相当自信を持っても良いでしょう。


知識のある方ならば、まさしく微分方程式を解くやり方で、下のような方針をとっても問題ありません(わからない方はわからないままでも全く問題ありません)。

(発展知識)

$ f^{\prime}(t)=y$ とおくと、

$\displaystyle y=\int{\sqrt{1+y^2}}
$

であるから、もう一度微分して

$\displaystyle y^{\prime}=\sqrt{1+y^2}
$

である。つまり、


$\displaystyle \dfrac{dy}{dx}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sqrt{1+y^2}$  
$\displaystyle dx$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \dfrac{dy}{\sqrt{1+y^2}}$  

である。両辺を積分すると、$ (1)$ より

$\displaystyle x=\log{(y+\sqrt{1+y^2})}+C
$

となる($ C$ は積分定数)。条件$ (b)$ から$ C=0$ がわかる。すると、$ (2)$ より

$\displaystyle y=\dfrac{e^x-e^{-x}}{2}
$

である(後略)。

(発展知識その2)

解答の関数 $ f(x)=\dfrac{e^x+e^{-x}}{2}$ は双曲線関数と呼ばれています。三角関数とよく似た特殊な性質を持っており、基本的な関数の一つとなっています。興味のある方は次のwikipediaのリンクをご覧ください。wikipediaリンク:双曲線関数

全体講評

$ \fbox{1}$$ (1),\ (2)$ および$ \fbox{3}$$ (1),\ (2)$ は絶対に確保。その次には$ \fbox{2}$ を確保したい。$ \fbox{2}$ はやや混乱してしまいそうだが、問題自体は標準的なレベル。

$ \fbox{1}$$ (3)$ および$ \fbox{3}$$ (3)$ は相当な実力のある方でも難航したことだろう。機械的処理力だけではなく、発想力も試される。

全体として、医学科で6割、歯学科で5割5分、その他の学部の受験生で5割以上が目標。

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