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東京医科歯科大学2004年度入試問題数学解説

90分、120点。


$ \fbox{1}$ レベル:$ \beta$ 、解答時間:30分

三角関数の総合問題です。

$ (1)$
三角関数の2倍角、3倍角の公式の確認です。これらの公式はどれも、三角関数の加法定理から導かれます。まずは2倍角の公式から。


$\displaystyle \sin{2\theta}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sin{(\theta+\theta)}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \sin{\theta}\cos{\theta}+\cos{\theta}\sin{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 2\sin{\theta}\cos{\theta}$  
$\displaystyle \cos{2\theta}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos{(\theta+\theta)}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos{\theta}\cos{\theta}-\sin{\theta}\sin{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos^2{\theta}-\sin^2{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos^2{\theta}-(1-\sin^2{\theta})$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 2\cos^2{\theta}-1 \ (=1-2\sin^2{\theta})$  

ここまでは大丈夫でしょう。3倍角ではこれを用います。


$\displaystyle \sin{3\theta}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \sin{(2\theta+\theta)}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \sin{2\theta}\cos{\theta}+\cos{2\theta}\sin{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 2\sin{\theta}\cos^2{\theta}+(1-2\sin^2{\theta})\sin{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 2\sin{\theta}(1-\sin^2{\theta})+\sin{\theta}(1-2\sin^2{\theta})$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 3\sin{\theta}-4\sin^3{\theta}$  
$\displaystyle \cos{3\theta }$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos{(2\theta+\theta)}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \cos{2\theta}\sin{\theta}-\sin{2\theta}\sin{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle (2\cos^2{\theta}-1)\cos{\theta}-2\sin^2{\theta}\cos{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle (2\cos^2{\theta}-1)\cos{\theta}-2(1-\cos^2{\theta})\cos{\theta}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 4\cos^3{\theta}-3\cos{\theta}$  

医科歯科のような上位大学を受験される受験生の方の多くは、単純に公式を覚えるだけでなく、毎回上のような操作を繰り返して、公式を持ち出してきます(2倍角くらいなら暗記でも事足りますが)。三角関数の加法定理さえ頭に入れておけば、余分な容量を消費する必要はないのです。

全部覚えてもいいのですが、絶対に忘れますし、常に忘却の恐怖と闘いながら受験生活を送るのはしんどいでしょう。上の道筋さえ留めておかれれば、「簡単に導くことができる」と思えます。それって、結構な自信になると思いますよ。

$ (2)$
これは確実に取りましょう。こういった変形も教科書レベルです。

$ (3)$
$ (2)$ を利用します。

$ (4)$
$ \dfrac{2}{\sqrt{3}}\sin{\dfrac{n+1}{3}\pi}$ $ n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots$ のとき、周期$ 6$ $ 1,\ 0,\ -1,\ -1,\ 0,\ 1$ を繰り返すことに気が付けば、$ 6$ つの場合分けでなんとかなります。実際に試験場でも、解答のような表を書かれた方が、間違いを減らすことができるでしょう。

あまり見かけないタイプの問題ですが、このレベルを初見で解けるようになることが、まずは第一の目標です。

特に、医科歯科大学の場合、「誰もがどこかで見たことあるような問題」から、もうワンステップ上の問題を出題してきます。未知の問題にも立ち向かうには、演習の量はある程度は必要でしょうが、時間をかけて1問をしっかり考えることが、何よりも大切です。

数学は、答えを見てしまうと、なんだ、当たり前じゃないか、と思うことが多いのですが、それを自分で出せるようになるまでが大変です。「自分で考える」訓練が、合格への一番の近道です。


$ \fbox{2}$ レベル:$ \gamma$ 、解答時間:30分

「とてつもない難問」に見えた方と、「なんだこんな簡単な問題」と思えた方に、二分されたのではないでしょうか。

なによりも実験が大切な問題で、具体的に紙に例を書いていけば、少しずつ問題の構成が見えてくることでしょう。

$ (1)$
まずは意味を掴んでください、という問題。$ \vert m-k\vert>2$ のときは、$ g(x)$ の定義より$ f_k(m)=m$ となりますから、これは集合$ S_k$ には含まれません。すると $ \vert m-k\vert\leqq 2$ となりますから、後は具体的に調べれば大丈夫です。

$ (2)$
$ (1)$ を解くと、結局$ f_k(m)$ というのは、

$\displaystyle a_1,\ a_2,\ a_3,\ \cdots,\ a_{k-1},\ a_k,\ a_{k+1},\ \cdots
$

という整数の並びがあったときに、これを

$\displaystyle a_1,\ a_2,\ a_3,\ \cdots,\ \fbox{$a_{k+1}$},\ a_k,\ \fbox{$a_{k-1}$}
$

に変更する操作であることがわかります。その中で、「元の数字」と、「元の数字と異なるもの」のペアが、集合$ S_k$ に含まれるわけです(ここでは$ a_{k-1}$$ a_{k+1}$ に変わっていますから、 $ (a_{k-1},\ a_{k+1})$$ S_k$ に含まれ、同様に、$ a_{k+1}$$ a_{k-1}$ に変わっていますから、 $ (a_{k+1},\ a_{k-1})$$ S_k$ に含まれます)。

$ T_{k,\ l}$ というのは、この操作をもう一回繰り返しただけのものです。

$ (3)$
問題の構造が把握できていれば、$ k-1$$ k+1$ が、$ 2,\ 4$ のどれかにならなければ、 $ T_{3,\ 4}=S_3\cup S_k$ となることがすぐわかります。

なので、 $ k=1,\ 3,\ 5$ となります。

$ (4)$
$ (3)$ から、 $ k=1,\ 3,\ 5$ の可能性しかあり得ませんが、$ k=3$ の場合は当然 $ T_{3,\ 3}=T_{3,\ 3}$ ですから、これは除いて考えなくてはいけません。


この問題は、大学で習う「群」の互換性をテーマにしています。たとえば、操作$ f_3$ を施してから、次に$ f_4$ を施したとき、 $ f_4(f_3(m))\ne f_3(f_4(m))$ でしたね。ある操作を施したとき、その順番が問題になってくるわけです。

たとえば、ある整数に$ 3$ を掛けてから$ 4$ を掛けても、$ 4$ を掛けてから$ 3$ を掛けても、結果は同じ数字になりますが、変換$ f_{k}(m)$ ではそうはならない、ということです。私たちは普段かけ算をするときに、(括弧がない限り)あまりその順番を気にすることがありませんが、そうでない世界もたくさんあるということです。

こんな理論がどう使われるのか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、抽象代数学の難しい理論を発展させていくと、「5次以上の代数方程式には解の公式が存在しない」(アーベル・ルフィニの定理)になったりします (Wikipediaリンク:アーベル・ルフィニの定理)

この問題は代数学の基礎の部分をテーマにしたということですね。


$ \fbox{3}$ レベル:$ \gamma$ 、解答時間:30分

$ (1)$
「最短距離を考えるときは、折り返し」というのは受験の常套テクニックですね。おおげさに数式を持ち出す必要はありません。

$ (2)$
ここでは微分が必要です。感覚的に明らかですので、$ y>a$ のときは最初から省いて考えてもよいでしょう。

$ f^{\prime}(y)$ は簡単な形になりませんが、分子の $ 2y-\sqrt{y^2+1}$ をもう一度微分しても良いですし、解答のように変形しても良いでしょう。解答のような変形は、覚えておかれると計算の労力が省略できるので、便利です。

場合分けが必要になりますが、細かい部分に注意しながら進めましょう。

$ (3)$
当然$ (2)$ を利用します。$ P,\ Q$$ x$ 座標が0 になることはすぐに分かるでしょう。そこから、点$ O,\ M$ をうまく話に絡めれば、比較的スッキリと解くことができます。


この問題の背景にあるのは、「ある平面図形の内部に点があり、平面図形の頂点とその点を結んだとき、どのような点の取り方をすれば線分の和は最小になるか」という問題です。たとえば、三角形の内部に点があり、その点と頂点を結ぶとき、どのような位置に点があるとき、線分の和は最小となるのでしょうか。

\includegraphics[width=60mm]{3.eps}

これは、昔からよく知られた問題で、図で、 $ \angle{APB}=\angle{BPC}=\angle{CPA}=120^{\circ}$ となるとき、$ AP+BP+CP$ は最小となります(ただし、三角形$ ABC$ はどの角も $ 120^{\circ}$ を超えないものとします)。この点は、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマー(Pierre de Fermat)により発見されたもので、「フェルマー点」と呼ばれています。

医科歯科大学の本問題は、フェルマー点の拡張のようなもので、実は$ (3)$ $ AP+BP+PQ+CQ+DQ$ が最小となっているとき、 $ \angle{APB}=\angle{APQ}=\angle{PQC}=\angle{CQD}=\angle{DQP}=\angle{QPB}=120^{\circ}$ となっています。

\includegraphics[width=80mm]{4.eps}

ミツバチは、このような形を採用することで、最小限の物質で巣を作ることができます。

\includegraphics[width=40mm]{5.eps}

全体講評

まず $ \fbox{1}(1),\ (2),\ (3)$ を確実に取る。$ \fbox{3}$$ (1),\ (2)$ までは標準レベル。

$ \fbox{2}$ も題意が飲み込めればそれほど難しい問題ではないが、時間が取られる可能性がある。このような問題が出題されたときは、思い切って他の問題に力を注ぐのも一案である。

その$ \fbox{2}$ も、$ (1),\ (2)$ までは力業でもいいので、確保しておきたい。

残りはどれも難しいが、 $ \fbox{1}(4)$ $ \fbox{3}(3)$ のうち、どちらか得意な方は部分点を狙っていきたい。

医学科で目標6割、歯学科で5割5分、その他の学部で5割以上が目標。レベルの高い出題であるので、十分な演習が必要であるが、本学に向けた対策をしていた受験生には、比較的やりやすい問題だったのではないだろうか。初見の問題でも、全く習ったことのない範囲は出題されないはずなので、見た目にごまかされず、しっかりと最後まで自分の力で解く訓練が有効である。

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